1993 年 日
監督: 黒澤明
出演: 松村達雄
香川京子
井川比佐志
わたしは内田百間のファンだ。幽玄的なのか幻想的なのか、なんとも説明しがたい曰くありげな小説が好き。とんでもないくらいの融通のきかなさと、はたからみるとカワイイと思わずいってしまいたくなるよな頑固さがおかしいエッセイが好き。ともあれ、長年のファンであったために、わたしなりの「内田百間像」みたいなものがあったわけですよ。
黒澤監督の「まあだだよ」はこの内田百間を主人公にしたもの。黒澤+百間ということで絶対観なきゃと思って観にいった。わたしのイメージしていた百間と黒澤の百間は、共通点は皆無だった。だからといって別にがっかりというわけでもなくて、ふーん、黒澤監督にとって百間はこんなふうに解釈されたんだなと思っていた。先生と弟子の関係が中心だったから、そういうふうに百間を捉えたことはなかったから、新鮮ではあった。
よく考えれば、実際の百間がどんな人だったかなんて、あたしは知らないんだよね。小説とエッセイからイメージしているばかりで。でもそれでいいんだ。
映画のなかでは、香川京子の演じる奥さんと百間先生が住む小さな家を移しながら、四季がゆっくりと流れていくシーンが心に残っている。冬がとくにきれいだった。
by kiryn (2001/10/14)