汚れた血

Mauvais Sang
1986 年 仏
監督: レオス・カラックス
出演: ジュリエット・ビノシュ
ドニ・ラヴァン
ミシェル・ピコリ


 そのときの自分の抱えている感情や感覚に驚くほど共振してしまう映画がある。カラックスのこの映画は、わたしにとってはまさにそんな作品で、きわめて個人的な感覚と結びついてしまっている。(まあこれは、映画的にどうだったかというコメントが書けないということなのだが。)
 ある時期に集中的に何度もこの映画を観た。恋愛の不条理な力、とでも名づけうるものに支配されていたときで、この映画にあった「疾走感」に痛いくらい共振していた。いつ失速するともしれないような息苦しさを、何度も味わいたかった。
 ドニ・ラヴァンとカラックスはよく似ていたし、当時カラックスの恋人だったジュリエット・ビノシュも、カラックスにかなり影響を受けていたのではないかと思う。この三人の雰囲気はとてもよく似ている、と思っていた。
 ビノシュは寡黙で、ときどき息で前髪をふっと吹く。最後になってはじめて走り出していく姿も目に焼きついている。
 「ダメージ」あたりの作品で、ファム・ファタール役に「?」となってしまうビノシュだけど、今ではわたしも、彼女はちょっと田舎娘っぽい役の方がいいと思っているけれど、この映画だけはファム・ファタールなビノシュ、にしておきたい。
by kiryn (2001/12/15)


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