19世紀から20世紀への世紀転換期にドイツで活躍したゲオルグ・ジンメルという人がいて、わたしは彼の作品がけっこう好き。ベルリン生まれベルリン育ちの、まあいわばシティ・ボーイですね。感性がクールで非常に洗練されていて、都会的。「都会」というものが現れつつあった時代の都会っ子というべきか。
ふつうはジンメルは社会学者ということで知られているので、難しい本もいっぱい書いているのだが、別に専門にジンメル研究するのでもないかぎり、エッセイを読むように彼の作品を読んでいいのではないかと思う(ていうか、まさに「エッセイ」が彼のポイントなんだけど)。
ちくまの学芸文庫あたりに『ジンメル・コレクション』という本も出ていて、訳も流暢で読みやすい。有名な「取っ手」や「橋と扉」あたりを読んでいると、サロンでは話の名手だったというエピソードもうなずけるほどのおもしろさ。
つくづく、こんなところに着眼する感性って一体何?と思う。彼の文章は、やわらかい触手がそれまで気がつきもしなかった部分にそっと触れてくるような、そういう意外さがある。