G.I.ジェーン

G.I.Jane
1997年 米
監督:リドリー・スコット
出演:デミ・ムーア
ヴィゴ・モーテンセン
アン・バンクロフト


 デミ・ムーアのスキンヘッドや筋骨隆々ボディやsuck my dick!ばかりが有名な映画だったけど、実際に見て、ま、そういわれても仕方ないわなと思った。
 何に話の焦点をあてたいのかさっぱり分からない。女が特殊部隊に参加して、という一点がこの映画のオリジナリティに尽きるし、湾岸戦争以降、現実に女性兵士問題は非常に大きな問題になっていったわけだから、この映画のテーマそのものは非常にユニークなものでありえたはず。リドリー・スコットもそのあたりの社会性は十分認識した上で、この映画を撮ったわけでしょ?
 会社とか大学とか議会といった社会組織においても、男性中心に組み立てられてきた秩序や組織や連帯のなかに女性が入り込んでいくのは、女性にとっても男性にとっても心理的負荷を伴うものだと思う。まして、軍隊という集団はきわめて男性中心社会であるわけだから、そこに女性が同じ仲間として入り込んでいくのは、他の社会集団の事例以上に難しいものがあるだろう。
 映画がどうも物足らないのは、オニール大尉(デミ・ムーア)の鍛え上げられていくボディ面や彼女が男性兵士に受け入れられていく様子など、客観的な側面は描かれているのだけれど、彼女の内面がほとんど描かれていないところにある。とにかく強靭な精神力をもち、男性兵士と同等に扱えと要求し、しかも彼らに引けをとらずに訓練についていくスーパーガールを目にするだけ。ただのエンターテイメントだったらこれでいいけど、ちょっとは社会性を意識している映画だとしたら、これはないんじゃない? 「テルマ&ルイーズ」では、精神的にどんどん成長してカッコよくなっていく人物を描いた監督だけに、かなり外したなあって思ってしまう。
 おまけに後半の「実戦」からはサイアクの展開。アメリカの都合で勝手にリビアに侵入して、ベドウィンに見つかったからといってリビア人を殺しまくって、挙句の果てに、作戦成功だか訓練終了だか何かで、オニール大尉たちみんながメダルをもらって終わるって、もう「ハァ?」てかんじ。疲れました。


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