藤野千夜『恋の休日』を読む。
こういう小説を読むのは久しぶり。マンガを読んでるみたいにさらりと読めるのがうれしい。
どういう小説をよむにしても、作品に対して等距離をおいて読みたいと思うのだけれど、あまりにも「私」や「俺様」が前面にですぎている作品は性が合わないなあと思う。作家の個性なるものが文面から滴り落ちてきて、読んでいてしんどくなってくるというか。ある程度つきはなした文体で、さらっとしてるけど深みがあるというのがいい。
で、藤野さんの作品はこの条件を比較的クリアしてくれる。淡々としていて救いがない。覗いてはいけないものを覗いたら、あると思っていた人と人の間の関係性の網の目がぷっつり切れていて、そこから闇がぽっかり開いていた、てかんじかな。人と人との微妙な距離って、ちょっとまちがえるとすぐに壊れてしまう。でも意外とけっこう簡単に修復できるのかもしれない。同じ人とは無理でも別の人となら。
救いがないとわかっているから、かえって開放感のようなものも感じられるんだろうか。