ドイツの田舎町

 4月って世間が妙に活気づいていて、なんだか気疲れしてしまう。花粉のせいか目のあたりもむずかゆいし、春ってこんなんだっけー?と調子が狂っている。

 ドイツではミュンヒェンとか大きな町にも行ったけど、カルウとかウルムとか小さな町にも行ってみた。カルウはいわゆる「黒い森」のなかにあるヘッセの故郷で、ドイツの田舎はこういうかんじなんだなあと感慨深かった。電車も単線で、森のなかを分け入っていくかんじ。森がひらけると、赤い屋根の町が車窓から見え、それをすぎるとまた森のなかに入っていく。きれいな小川があって、途中からはずっとその川沿いを電車が走っていった。
 カルウに行ったのは日曜日で、電車の本数も少なかった。時刻表をみまちがえて平日に来るだけの電車を待っていたから、時間が中途半端に余ってしまった。駅のまわりはちょっとどうしようもないエリアだったので、もう少し山の上まで登ってもよかったなと後悔した。でも天気もよく、駅のベンチにぼーと座っているのも悪くはなかった。
 ヘッセの生家はぜんぜん別のお店になっていて、ヘッセの家だったと記したちっぽけなプレートがかかっているだけ。すぐ近くになる町の教会に入ってみた。めずらしく内部は木で作られた教会で、こじんまりとしていた。この日の7時からはコンサートが予定されていたらしく、椅子が演奏者の座るような形に並べられてあった。残念ながら、7時までここにいることはできなかったのだけれど。どんな音楽が奏でられたんだろうか、と少し心残りだ。

 ウルムは大聖堂がある町。田舎ではなくて、地方の小都市といったところ。とにかく大聖堂のゴシック教会の迫力はすごい。とまった宿は、なんとこの大聖堂のすぐ真横のペンション。19世紀末の貧乏書生が住んでいたような屋根裏部屋みたいな部屋だった。ドイツのホテルは、それでもシーツやタオルは清潔なので助かる。小さな窓からは教会しか見えず、一時間ごとに鐘がなる。何時間おきには、鐘も五重奏くらいでなってくれるので、一晩中賑やかなことこの上もなし。この町は時計がいらないんじゃないかな。夜はパイプオルガンを練習する音がかすかに聞こえてきた。
 泊まった日の夜には、前の広場でトルコ人のデモがあった。ここでは外国人労働者の姿をよく見かけた。ベルリンほどではないにしても、ハイデルベルクではほとんど見かけなかったので、ウルムは今のドイツの町の一般的な姿なのかもしれない。
 ウルムでは天気も悪く、小雨もふって、おまけに寒かったので、あまり動きまわっていない。で、することないからか、大聖堂の塔を登ってしまった。昔、バチカンの聖ピエトロ教会の塔を登ってエラくしんどかったので、登る気なんかなかったのに〜。ゴシックの高い塔のほとんど先端まで登ってしまった。地上から160メートルくらい登っても、石の装飾部分のすきまから地上が見下ろせて、はっきりいって怖い。風もびゅーびゅー吹き付けて、ヤメテクレーって思ってた。次に機会があったとしても、もう登りたくないね。