今朝は北海道地震のニュースから始まったが、エドワード・サイードが死去したことも知った。[via:CNN]
白血病だったというから死を覚悟してはいたのだろうけれど、パレスチナ問題が泥沼化して改善の兆しも見えず、イラクがアナーキーな状況に堕してしまった状況では、死に切れない思いはあったのではないか。彼の死がもつ意味は重い。
今朝は北海道地震のニュースから始まったが、エドワード・サイードが死去したことも知った。[via:CNN]
白血病だったというから死を覚悟してはいたのだろうけれど、パレスチナ問題が泥沼化して改善の兆しも見えず、イラクがアナーキーな状況に堕してしまった状況では、死に切れない思いはあったのではないか。彼の死がもつ意味は重い。
今日は誕生日。サイードの死とたまたま重なっただけで偶然でしかないのだが、自分のなかでは、なんだか不思議な気がする。
サイードの死は、日本の人たちの掲示板で知りました。ドイツではいまのところそのことが大きく報道されることはないみたいだし、彼の著書の翻訳が、書店の店頭にたくさん並んでいるということも、日本のようにはないのです。だからといって、英語も自由に読めるこの国の人たちが、サイードを読んでいないということには、必ずしもならないのですが。
イスラム問題の批評家としてよりも、「始まり」について書いた文学者としてのサイードを思い出します。音楽について書かれた美しい本は、日本語訳も手元に持ってきていて、ときどき開いてみたりしています。それから邦訳を買う機会のなかった彼の自伝"Out of Place"もドイツ語訳でぽつぽつ拾い読みしているのですが、その中に収められている子供時代から青年時代にかけての写真は、サイードの育った世界の雰囲気をとてもよく伝えています。
若い頃の彼は、昔の西部劇スターの「エロール・フリンのような」美青年だったと、かつて大江健三郎が形容していたのですが、この写真を見て納得、後でエロール・フリンの映画を観て、なるほどと納得していました。病に侵されて、すでに数年前からその美しさは見る影もなかったのですが、そのなかでよくここまで生きてきたなあと思います。
nozakiさん、たくさんのコメントありがとうございます。わたしは『オリエンタリズム』でサイードを知ったので、ポストコロニアルの文化批評家の印象を強く持っていました。でもピアノもセミプロ級だし音楽論も書くし(こういう知識人多いですよね)、もともとは文学批評畑の人だったのですね。
9・11、イラク戦争後は本屋さんにはサイード関連の本がコーナーを作って山積みされていて、どこから手をつけたらいいのかと考えあぐねていましたが、少しずつ読んでいきたいです。とりあえず自伝が読みたい。でもせっかくなので、『エラボレーション』と『始まりの現象』も読んでみたいなあ(って、ついていけるのか?)。
ドイツでの流行は必ずしもこちらとは軌を一にしないのですね。でもきっと関心がないわけではないのでしょうね。パレスチナ問題に関しては、地域的にも歴史的にも、日本の関心の比ではないと思うので。ドイツのニュース・サイトでは、ときどきアラブ系の文化人も登場しているようだから、サイードはワン・オブ・ゼムだったのかしらん。
エロール・フリン、、、あまり芳しい噂は聞かない俳優さんでしたが、そうかー、サイードと似てますか。見てないからなんとも、、、うーん微妙。
kirynさん
ドイツと日本、思想的な流行ということでは、意外と多くのものが共通しています。ただし、政治家からアナウンサー、さらにはお笑いタレントまで、ドイツ語で発言できるアラブ系の人たちが、たくさんいるこの国では、アメリカや日本とはちがったバランスでパレスチナ問題が語られているのでしょうね。少なくとも問題意識としては、日本よりもはるかに切実な、地続きの問題として受け取られているように思います。
サイードの音楽論は、『オリエンタリズム』における彼の問題意識とつながっているので、そういう意味でも普通の音楽論とはちがった魅力がありました。文学批評の著作は、わかったというよりも、にらめっこしていた時間が長かったので、えらそうなことも言えないのですが・・・
たしかに自伝がいちばんいいでしょうね。一方で現在のパレスチナ問題にまでつながる歴史を背景に描きこみながら、もう一方で自伝文学の根源に触れるような味わいがあります。
『音楽のエラボレーション』が手に入ったので、読みました。「音楽について書かれた美しい本」というnozakiさんの評に納得です。作曲家の名前と音楽が頭のなかですぐにむすびつかないので、音楽論の話に入っていくとついて行けなくなりましたが(でもグールドはおもしろかった)、いたるところで、サイードの感性に出会いました。
とくに最後の章がいいですね。支配的な西洋クラシックと、それに対抗する音楽、私的な記憶とむすびつき常に回帰してくるような音楽との交錯を描いたあたり。重層的に波紋が拡がっていくようで、一種の心地よさを感じました。次は自伝を読むぞー。