美、あるいは。

「美しいものとは、人がじっと注視できるものである。何時間ものあいだ、見つめていることのできる一基の彫像、一枚の絵。」――シモーヌ・ヴェイユ
 なるほど、と思った。目が離せないもの、じっと凝視めてしまうもの、たしかにそれは美かもしれない。
 では目を逸らしてしまうもの、注視しがたいものとは、醜だろうか、苦だろうか、それとも悲だろうか。それらは目からは逸れてしまうが、心には焼きついて離れないようなものかもしれない。