ヘドウィク・アンド・アングリー・インチ

Hedwig and the Angry Inch
2001年 米
監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演 ジョン・キャメロン・ミッチェル
マイケル・ピット
ミリアム・ショア


 東ベルリンで性転換手術に失敗したヘドウィクは、やってきたニューヨークでドラック・クィーンとしてドサまわりする日々。彼/女の作った歌は昔の恋人に盗用され、今じゃ恋人は大スター。プラトンの『饗宴』をモチーフに、切り取られた魂の半分を探す美しい歌を歌いながら、ヘドウィク自身の「魂の彷徨」が語られていく。
 観る前は「ベルベット・ゴールドマイン」を想像していたけど、それよりも、「わたしの人生」を語ってくれるヘドウィクに、「トーチング・トリロジー」を思い出した。でも「トーチング」や「ベルベット」に比べても、一昔前のゲイ映画にある暗さがあまりない。元がミュージカルだから、話の展開にテンポのよさがあるのでそう思えるのかもしれないけれど、映画的にみても笑えるシチュエーションが多くて、とてもコミカル。
 だいたい、東ベルリンの瓦礫の山(ごみ置き場?)で真っ裸で日光浴しているところを黒人のアメリカ兵に見初められて結婚て、なんじゃそりゃな状況よ。おまけに性転換までして苦労して東ベルリンから出国したのに、アメリカにきたらベルリンの壁が開いちゃって、あの苦労はなんだったの?みたいなことになってるし。それに例の「アングリー・インチ」もどう考えてもオカシイ・・・とにかくこんなかんじで、ヘドウィクのキャラクターが非常によく作りこんであって、おまけに彼/女はとても美しいので、見ごたえあった。歌もよかったしね。
 難癖つければ、盗作した元・恋人は、ヘドウィクの切り取られた魂の半身としてみるには役不足すぎ。あと、ヘドウィクの「夫」として登場していたバンド仲間の兄さんは、後半あたりからやっと女性だってことが分かるんだけど、彼/女についてはもっとしっかり描いてもいいんじゃないかなと思った。男と女の境界線に立つ存在としてはヘドウィクの鏡になっているはずだけど、どうもヘドウィクばかりにスポットライトがあたりすぎて、その辺が霞んでしまっていたので、ちょっと残念だったかな。


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