愛の神、エロス

eros
2004年 仏・伊・米・中・ルクセンブルグ
「若き仕立て屋の恋」
監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)
出演:コン・リー(鞏俐)
チャン・チェン(張震)

「ペンローズの悩み」

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ロバート・ダウニーJr.
アラン・アーキン

「危険な道筋」

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:クリストファー・ブッフホルツ
レジーナ・ネムニ


 タイトルどおり、「エロス」をテーマにした三人の監督によるトリロジー。三者三様のエロス論が楽しめる、といいたいところだけど、内容的には王家衛に一番満足しました。
 「若き仕立て屋の恋」という、ルコントを思い起こさせる日本語タイトルの原題は、シンプルに「The Hand」。娼婦の「手」と仕立て屋の「手」が、場面場面で、言い尽くしがたい情念と恋情と欲望と絶望を語り、短編ながらもとても密度の濃い映画に仕上がっている。物語が狭い部屋のなかで終始しているのも、密度を高める効果を生んでいるのだと思う。王家衛特有の陰翳の深い映像美は今回も十分堪能できる。コン・リーのふくよかな肉体を包む、絹で織られたチャイナドレスの繊細かつ大胆な模様が空間を彩るあたりなど、画面構成などもすばらしい。とにかく完成度の高さはお見事。
 次の映画はソダーバーグ。「エロス」でソダーバーグ?という気持ちもあったのだが、見てみないことには分からない。でも、見ているうちに耳のおくで、だいだひかるが「ど〜でもいいですよ♪」と歌いだし、そのあと記憶がなくなった。よってコメント不可です。
 気がつくとアントニオーニの映画になっていた。こんなワケわからん映画久々に見た。コメントできないです。専門的に映像分析できる人におまかせします。昔から詩や詩的表現に対する感受性はなくて、苦手ジャンルだったりするんで・・・。
 やはり東洋人には西洋人の感覚は分からないのだろうか、とかナントカありがちなプチ・オリエンタリズム思考が頭のなかをグルグルしていたのだが、パンフレットに書いてあった文章を読んで、ムリヤリ自分を納得させることにする。
 パンフ曰く、「今年92歳を迎えるイタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ」は、「下半身不随の上、すでに言葉も音もほとんど持たない世界で生きて」おり、「彼独自の世界観を宇宙的な視点で詩的に描いたエロス論に世界が驚愕した」、だそうです。
 わたしも驚愕しました。世界が驚愕したんなら、西洋人もきっと驚愕したんだろう。異次元です。王家衛で十分モトはとれるので、ある意味、観て損はない(多分)。
(May 6, 2005)
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