国立西洋美術館でやっていた「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」展について、せっかく見たので少しだけメモしておこう。
George de La Tour(1593-1652)、17世紀、フランスに攻め入られて亡国の危機にあったロレーヌ公国を中心に活動した画家、らしい。
実は美術館はとても混んでいて、深く瞑想するようなラ・トゥールの作品を落ち着いて見れる状態ではなかった。比較的空いていたのが、同時に展示されていたジャック・カロ(Jacques Callot 1592-1635)の版画作品。こちらは戦争の惨禍と残酷さをダイレクトに描写しているものだった。何十人もの人間が大木に吊るされている場面など、初期近代のヨーロッパの現実を生々しく伝えてくる作品だった。ジョルジュ・アガンベンの『ホモ・サケル』を思い出した。戦争の惨禍のなかで、人間の生はいかに剥き出しの状態におかれてしまうものであるか、考えさせられるものだった。ラ・トゥールの作品はカロの作品とネガとポジの関係にあるようだ。その作品に戦争の影は直接は現れていないけれど、隠蔽された形で反映していたように思う。
・・・物理的にきちんと見れなかったという事情もあるけれど、どうも今回はカロの作品のほうがインパクトが大きかったみたいだ。