先日、「TTR能プロジェクト秋公演・融」というお題目の能を観に行った。
かつて栄華をきわめた融の大臣の霊が、月の照らす荒野で、旅の僧侶を前に華麗な舞を披露するというものだった。秋も深まる季節にふさわしい演目らしく、月を愛でる感性と、栄枯盛衰の儚さをにじませた内容だった。
能を観たのははじめてで、絶対寝るんじゃないかと思っていたけれど(すいません、途中は寝てました)、意外にも楽しめた。最後に、爺さんが融の大臣に変化して、ひたすらに舞を舞うあたりなど、なかなかの迫力で見飽きなかった。最初に出演者の方が演目の内容も懇切丁寧に説明してくれたし、解説本の内容も丁寧だったので、なんとかついていけたというのが正直なところかもしれないけれど。でも、語尾が「候」オンパレードの会話もだんだん聞き取れるようになり、中盤から後半は、こっちも調子付いてきたのだと思う。
日本の中世っていうのも、外国文化と同じくらい別の感性をもっている気がするし、そういう目線で眺めていたかもしれない。「月」とか「幽玄」の感性って、自分の生活にはまったく無縁だったりするのが、なんとも・・・。