Surviors of the Holocaust
監督: スティーブン・スピルバーグ
スピルバーグの有名な映画「シンドラーのリスト」の関連映画に「”シンドラーのリスト”の真実 / SURVIORS OF THE HOLOCAUST」という作品がある。一種のメイキング・オブにあたるのだろう。ナチスの迫害を受けてアメリカに亡命してきた人々が、自分の体験を語るドキュメンタリーである。スピルバーグが編集をしていて、さすがに構成はうまい。でもこの「うまさ」が逆にあだになっている作品である。いまさらスピルバーグに何かを期待しているわけでもないのだが、この作品を見終わったときの違和感といったらなかった。
一人一人が語るエピソードはあまりにも辛くて、観ている間、涙を抑えることができないほどだ。自分自身の発した言葉につまって、不意に沈黙が訪れたりする瞬間、涙を流すこともなく淡々と告白を続けたあとの沈黙――スピルバーグの編集で小きれいにまとめられてしまっていてさえ、サヴァイバーたちの、語っても語りつくすことなどありえないであろう告白は、観ている者の心をわしづかみにするには十分だ。
この作品の最後をスピルバーグは、今は愛する家族に囲まれて幸せだと語る老人で締めくくる。そして観ている側は「安堵」する。この人たちはあんなに辛い目にあったけど、今はアメリカで幸せに暮らしているんだ、と。スピルバーグは、わたしたちを不安に陥れる告白を彼女/彼らにさせながら、同時に、心配することはありません、みんな今は幸せだから、ほらやっぱりナチスはいけないよね、と語りかけているようだ。
違和感の正体はここにある。ほんとうは、わたしたちは「安堵」してはいけないはずだから。安堵して日常の世界に戻ってきて、それっきり忘れ去ってしまってはいけないはずだから。収容所で自分の犯した「罪」の記憶にいまなお囚われているユダヤ人、彼の顔に刻まれた空虚な闇をわたしたちは覚えていなくてはならないのだ。画面に映し出された、日常の世界と調和できないまま治りきらないでいる、見えない傷跡を――。
(Saturday, November 25, 2000)
si