1965 年 日
監督: 鈴木清順
出演: 川地民夫
野川由美子
石井富子
清順美学的にいえば、戦場における死とエロス、といったところの映画なのかもしれない。
太平洋戦争中で、兵士相手の娼婦が日本軍のある兵士を好きになって、彼をずっと追いかけるんだけど、男のほうは女を突き放したり振り回されたり、といったストーリーだったと思う。最後は心中にはほどとおいんだけど、心中と見られる形で一緒に爆死。兵士は娼婦ごときと遊んでいるわけではないということを示そうとして自爆しようとするんだけど、結果的には、娼婦ごときと心中したふがいないヤツということで汚名をあびるという結末だった。
正直、そんな皇軍兵士の心理の綾などどうでもよかった。ショックだったのは、あきらかにその娼婦たちが「従軍慰安婦」だったこと。主人公の彼女が上官にレイプされたり、兵卒が列になって部屋の外に並んで待っていて、自分の階級と名前を大声で叫んでから部屋に入ってくるシーンが驚きだった。
この映画は告発の映画でもなんでもない。こういった場面は、おそらくある年代までの人たちにとっては、戦地における「日常」をそのまま描いた単なる風景にすぎないのかもしれない。けれどもそれがいっそう、今の時代には、犯罪性さえ感じさせてしまう。
by kiryn (2001/10/19)
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