バーディ

Birdy
1984 年 米
監督: アラン・パーカー
出演: マシュー・モディン
ニコラス・ケイジ


 鳥が好きで、とても繊細な心をもったバーディと、彼の繊細さを理解したうえで付き合っているアルが主人公。でも時代はベトナム戦争で、二人とも戦争に行く。バーディの繊細さは戦場の過酷さに耐え切れず、彼は心のバランスを壊してしまう。アルがバーディに再開したのは、真っ白い病院のなかで自分を鳥だと思い込んで鳥になってしまったバーディの姿だった。
 十代のころにみたときは、バーディの繊細さが痛々しくて、すごく好きな映画だった。この映画は、一種の反戦映画といえるかもしれない。でも今思えば、アメリカの立場からみたベトナム戦争をあまりにもナイーブに描きすぎている。
 戦争を描く、戦争を扱う、というのは、ある国に属する人間がどのような立場で(国民か、移民か、亡命者か、強制労働者か)、どのように「あの戦争」を解釈しているのかが、あからさまに露呈してしまう。バーディにしろ、アルにしろ、戦争によって人生を狂わされてしまう被害者であるかのような描き方がなされていたように思う。それはたしかに悲劇だ。けれどもそこにはベトナムの人々の姿は現れない。そこにあったであろう悲惨さを知ることが、あらかじめ排除されている。今なら、こんな映画は、良心的であろうとするならば、撮れないだろうな、と思う。
by kiryn (2001/10/15)


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